血液透析とは腎臓の働きが低下して腎不全になった場合に血液をいったん体の外に取りだして機械を使ってきれいにしてから体に戻す治療です。
これを通常1回4時間、週3回行います。効率よく血液を体の外に取り出すために、内シャント手術という動脈と静脈をつなぐ手術を行います。

血液透析の患者さんの症状と考えられる疾患

長く透析を続けていると色々な症状が出現してきます。思いつく症状と考えられる疾患をまとめてみました。もちろんこれがすべてではありませんし、詳しく検査してみないとわからないこともあります。参考程度に見てみてください。

・食欲がない

・透析後からだがだるい

・日曜日(もしくは月曜日)の夜になると身体がだるくなる。

・手が握りにくくなってきた

・身体がかゆい

・足がむずむずする

・シャントの手が腫れてきた

・透析中シャントの手が痛む、冷たい

・シャントの穿刺したところが腫れて膿が出る

・針刺しが痛い

・歩いていると足がしびれてきて痛む。少し休むと良くなる

・手や口のまわりがしびれる

・息苦しい

・食欲がない

              消化管(胃や腸)に問題がある可能性があります。それ以外に透析不足になっている可能性があります。透析の量を確認してもらって十分であれば消化管の精査をおすすめします。

・透析後からだがだるい

              透析後にだるさを起こす原因としては、基礎体重(ドライウエイト)が厳しく、脱水状態になっている可能性が考えられます。血圧を測定していつもより低ければその可能性が高くなります。基礎体重は一定ではなくその時の体調や、場合によっては季節によっても調整していく必要があります。

・日曜日(もしくは月曜日)の夜になると身体がだるくなる。

              中2日空いた夜にだるくなると言うのは、体重増加が多く増えすぎてしまった可能性と、老廃物がたまりだるくなった可能性が考えられます。体重を量ってみることをおすすめします。もし体重増加がそれほどではなく(基礎体重の5%以内が適正と言われています)だるい症状が起こるとしたら透析不足の可能性がありますので透析量を確認して増やせるようでしたら増やしてもらうことをおすすめします。

・手が握りにくくなってきた

              頚椎(首の骨)の問題で神経が圧迫されている可能性、透析アミロイドーシスによる手根管症候群の可能性があります。後者であれば最近では日帰り手術で治療してくれるところもあります。

・身体がかゆい

              透析患者さんはいろいろな原因でかゆみが生じます。基本的に除水をすることによって皮膚が乾燥しがちになるので、皮膚の保湿ケアが重要です。他に透析で除去できない老廃物によってかゆみが生じる場合や、透析膜に対するアレルギー、副甲状腺の機能が亢進することによってもかゆみが起こることがあります。アレルギーに対する薬や、透析患者さんのかゆみに特に開発された薬などを投与します。他に透析の膜をより高分子の物質まで除去できる物に変更したり、より生体適合性の高い膜に換えたり、血液透析を血液濾過透析に変更する、などの対処で改善を図ることもあります。副甲状腺機能亢進に対してはそれを低下させる薬を投与したり、場合によっては手術で副甲状腺を摘出したりすることがあります。

・足がむずむずする

              むずむず症候群と言い、腎機能正常者でもかかることがありますが、血液透析患者さんに多く発生すると言われている疾患です。原因ははっきりわかっていないのですが、睡眠障害や鉄欠乏との関連が言われています。治療としてはまず体内の鉄の貯蔵量をチェックして足りなければ充足するよう鉄剤を投与します。透析効率を上げたり透析膜を変更したりする事も有効なことがあります。他に漢方薬を投与したり、神経に作用する薬を投与したりすることがありますが、画一的な治療はないのが現状です。

・シャントの手が腫れてきた

              透析患者さんはほとんどの方が内シャントという血管の手術をすることによって血液透析ができるようになります。動脈と静脈を手術によって繋ぎ、動脈の血液を静脈に流すことになるのですが、これは元々自分の身体にないものを作り出すことになるため、どうしても無理があります。静脈が拡張できなかったところは狭窄となり、そこで流れが滞ると手の方に逆流することになります。それによってシャントの手が腫れることがあります。治療としては狭窄部分を血管内治療で拡げて流れを良くしたり、狭窄部分を切除してつなぎ直したり、人工の血管を入れてつないだりすることがあります。明らかに狭窄がなくても動脈、静脈が発達しすぎて血管が太くなってしまった場合には腕が太くなってくることがあります。この場合には流れをあえて制限する手術をして治療することもあります。他に、特に女性で乳癌の手術をした方などは、リンパの流れが悪くなっていることが多いために、血管の流れは問題なくても手が腫れてくることがあります。

・透析中シャントの手が痛む、冷たい

              シャントの手術をして本来手のひらの方に行くべき血液がシャントの方に流れすぎてしまうことによって手が血流不足に陥ってしまうことがあります。特に動脈硬化が強かったり、シャントトラブルによってより肘に近い、もしくはその上でシャントを作った方、人工血管を入れた方に起こりやすいと言われています。手先の血流を良くする薬を投与したり、手を保温するなどの治療で保存的に経過を見ることが多いのですが、改善しない場合にはシャントの作り直しが必要になることがあります。

・シャントの穿刺したところが腫れて膿が出る

              日々の透析によってシャントを穿刺した際に、その傷の治りが十分でなく感染してしまう事があります。自分の血管に起こった場合には穿刺を他の場所にしたり、抗生剤投与にて治癒が期待できますが、人工血管の場合には注意が必要です。自分の組織ではないため厳重な抗生剤投与が必要になることが多いです。このような場合には必ず早めに透析してもらっている病院に連絡してください。

・針刺しが痛い

              透析の針は通常の針と比べて太いため、穿刺の痛みはより強いことが多いです。そのため穿刺の前にはあらかじめ穿刺予定の場所に痛み止めの貼り薬を貼ってきていただき、痛みを抑える様にしています。更に最近では貼り薬の他に、塗り薬でより痛みを抑える物もありますので、ご希望の際には伝えてください。以前より急に痛くなってきた場合には出血や感染などが無いかチェックが必要です。

・歩いていると足がしびれてきて痛む。少し休むと良くなる

              これは腰から来ている神経が圧迫されて起こる場合と、足を栄養する血管が細くなって起こる場合があります。前者の場合には腰痛を伴っていることが多く、整形外科での診察が必要です。後者の場合には足への血流が悪くなっていないかを定期的に触診したり、機械を使ってチェックし、必要があれば治療が出来る施設にご紹介します。

・手や口のまわりがしびれる

              身体の中の電解質(特にカリウムやカルシウム)の異常によって起こることがあります。このような症状が出てきた場合にはすぐ透析してもらっている病院に連絡してください。

・息苦しい              

透析の前の日などに息苦しくなった場合には溢水になっている可能性があります。基礎体重が適正か、心臓の働きが十分かなどの検査が必要です。心臓の働きが急に落ちてきたときや、体重増加が多すぎる場合にも起こることがあります。